冬のブリームゲーム その壱

2020年1月17日

冬のブリームゲームを始めたのは、7年ほど前のこと。
当時、九州エリアで冬にルアーでチヌを狙うアングラーはほぼ皆無に等しかった記憶がある。


そんな中、当初は、当時の住まいであった北部九州エリアで個体数の多い本チヌ(クロダイ)をメインターゲットに開始したのだが…

そもそも河川などの汽水域で越冬するタイプのクロダイは圧倒的少数派であり、そのほとんどは沖の深みや水道筋・湾岸域のブレイクや磯場など 比較的、水温と塩分濃度が安定したエリア(100%海水域)で冬をやり過ごす傾向にある。

そんな中、これらの季節動向にそわない個体を狙う冬のリバーサイド・クロダイゲームは、正直かなりの難攻不落であった。
数がいなければ、それこそパターンと呼べるようなものは成立しないわけで、偶発的かつ散発的な釣果しか得られず、これはなんか違うなと感じた。


かといって、釣果優先でウェーデングして沖のブレイクを叩いたり、ガチ装備で磯場などに行ったりするのもなんかちょっと違う。
加えて、冬のホットスポット・温排水エリアに関しても、既に居場所が解っている個体を釣るのみの作業はあまり好みではない。

あくまで、ショアゲームの醍醐味である

魚を探す→傾向を探る→その先の成果や釣果

といった図式の中での釣りの成立を目指しつつ
尚且つブリームゲームに関しては、リバーサイドなどの比較的軽装かつお手軽に楽しめる範囲の釣りであってナンボだと思っていて、私はそれに拘っている

そんな絶対アングラー不利な条件下で、盲目的に釣りを行っていたわけだが…
クロダイに対してキビレはどうか?というと、これがまぁイイ感じでクロダイと入れ替わるように河川に入ってくることを知る。

入ってくる。って表現はちょっと違うような感じはするのだけど、産卵行動で海水域へ出払っていたキビレたちが、本来の生活圏である汽水域に帰ってくる、戻ってくるのが初冬のタイミングであることを知り、難攻不落なクロダイを諦め、キビレをメインターゲットにゲームを展開することにシフトチェンジした。

俗に冬キビレとかアフターキビレとか言われているゲームである。


この行動パターンに関しては、戻りのタイミング差こそあるものの、キビレの生息する地域であれば、概ね全国的に当てはまるシーズナルパターンのようで、決してキビレが多いとは言えないエリアの中でも、いくつかの河川を廻るうちに冬キビレを狙って釣ることが可能であることが解った。

しかも、クロダイとは違い釣れる日は二桁釣果なんて日もある。
冬のキビレは、大規模な群れを形成し居心地の良い環境に定位する傾向があり、魚が多くいる以上これは完全にゲームとしてパターンを確立できる釣りだなと確信している。

ただし、夏場のチニングのようにどこでも簡単に釣れるわけではない。

この時期の河川は、既に彼らの好む適水温域からは大きくハズれているわけで、あくまで生存維持活動が可能な越冬エリアの存在する河川でのみ成立するゲームであり、そんな越冬場がある川選びからこの釣りはスタートする。

適水温域をハズれた、いわゆるシーズンオフ期のサカナを狙う場合、意識したい項目は一貫していて

水温と塩分濃度の安定、それとベイトの存在

これに尽きると思う。
完全淡水、完全海水でそれらのサカナを狙うのであれば塩分濃度は無視できる。
また、チヌ族に関しては、ベイトの選り好みは皆無に等しいと思っているので、ベイトパターンに関してはあまり強く意識しなくても良い項目にあるように感じる。
(※ベイトの存在が不必要というワケでなく、キビレの越冬場がそのままベイトの越冬場にもなっており、目前の食べやすいエサが全てベイトとなるケースが多いため)

問題は、水温塩分濃度

まずは、水温の安定した川選び。

ここで重要かつ勘違いが多いのは、基準が実際の摂氏温度ではないということ。

もちろん、平均の摂氏温度は高いに越したことはないが…

夜間の平均最低水温が5℃。日中の平均最高水温が15℃。より
夜間の平均最低水温が8℃。日中の平均最高水温が12℃。といった河川やスポットのほうが、越冬場所としては好まれる傾向にある。

では、それはどんな場所か?

まずは、大規模河川を選ぶこと。
一級河川と呼ばれるような大きな河川がいい。

その理由は単純で、水量が多いということは水温も変動しづらくなる。
鍋いっぱいの水(大規模河川)を沸かすより、コップ一杯の水(小規模河川)を沸かすほうが短時間ですむ(水温が変動するまでに要する時間)のと同じ原理である。

続いて、大規模河川の中でもより水深のある河川、潮止め堰までの距離が長い河川が良い。

これは、前説と同様、水深があると単純に水量が多くなるということと、塩分濃度が関係する。 塩分濃度は、当然海水域に近ければ近いほど安定するわけだが、汽水域では川底を這うように海水域が存在している。

その境界線(塩水くさび)は、潮の干満で河川を上下するのだが
この海水域が無くならないスポットが存在する河川が、キビレが冬に定位する河川の傾向である印象を受ける。

まぁ、これも単純に海水のほうが暖かいのと、淡水に強いといっても、そもそもは海水魚であるが故の危機管理傾向なのかな?と思う。


対うべき河川が絞れたら…次の工程は、そんな河川内での越冬場探し


温水を排出するインレットなどがあれば、そこが一番良いのだが…w

自然条件の中でいうと 流れと水深の安定したエリア
つまり、河川の流芯部である。

これまでの話を単純に考えると、河口域が一番良いのでは?と思うかたも多いと思うが、大規模河川の河口の流芯は、まぁキャスト範囲に収まらないことも多い。そもそも明確な流芯が無くなる河川も多く、ただ広いだけで、地形変化にも乏しくなり掴みどころが少なくなりやすい。

加えて、生息条件が良すぎて、広範囲を回遊する傾向も強くなるため、釣れるには釣れるけど散発的にもなりやすい。
河口域は、群れが居る時と居ない時の差が大きく、釣果が日替わりで変動するといった印象を受ける。

あと…
大規模河川の河口はリバーサイドというより、ほぼ海なので…(爆)

ってことが個人的にあまり攻めない最大の理由かな?と思います…まぁ、釣れるには釣れるけどねw

いずれにしても、河川内でのキビレの越冬場は、河川幅が狭まり(流量が増す)、河川が蛇行する(流芯が岸による)アウトサイドベンドが定番である。

アウトサイドは、増水時の流れによる浸食を防ぐため、テトラなどのハードストラクチャーが入っていることが多いので現場でもすぐに解るし、Googleearthなどで予め確認すれば、どこに流芯が走っていて、どこに深みがあるのか?なんてのは、現場に行く前から簡単に解る時代である。

ポイントの水深は、深ければ深いほうが良いが、塩水が絶えない環境であれば最干潮時の水深が3mもあれば十分な印象を受ける。

それより重要なのは、何より流れである。
絶えず水が動くエリアが良い。
この理由も単純で、同一条件で同じ水量であれば、水が常に動いているほうが水温は変動しづらい。

同じサイズの水槽に同じ量の水を張った二つの水槽を、片方はそのまま(止水)、もぅ片方はエアレーションなどをした状態で、真冬の野外に一晩放置した場合、どちらが先に凍るか?といったことである。

私たちは体感的に、流れ(地上では風)があるほうが水や空気を冷たく感じるので、止水(無風)のほうが暖かく感じるが、それはその瞬間の話であって、長らくそこに留まって生存を維持するという観点からみれば、水温=体温なサカナにとって、水温は変動しづらいほうが生体を維持しやすいわけで、水温の安定したエリアこそ最大に過ごしやすい場所になるわけです。

なんで、意外にも夏の避暑地的スポットにサカナが居たりするw
アウトサイドのインレット周りとか… 人間なら滝壺修行みたいな状態だと思うんだけど(爆)

つまり、纏めると…

冬キビレの越冬場は、大規模河川内に点在する 常に海水が底を這い、水が動く流芯の深み
っていうのが、現状の私的アンサー。

まぁ、言葉で結論だけを聞けば非常に単純明快ですw
もちろん、これに当てはまらない個性派も存在してるけど。

大切なのは、ここかな?違うなぁ〜…と、トライ&エラーを繰り返しながらでも、これらの知識を利用して、自分で越冬場を探すことができる力を身につけること。

結構、年々で付場がヅレたりもするので、この探索力は必須かつ永続的な鍛錬が必要だと思うし、個人的にはこの居場所探しをしてる時が、結果を伴わない魚釣りの作業の中では一番楽しいひと時。

まぁ、見つけて仕舞えば、しばらくは楽しめるのも冬キビレの醍醐味なので、まずはそんな冬キビレを探しに足蹴なく河川に通ってみて欲しいですね。

以上、今回(その壱)はこれくらいで。

次回(その弐)は、そんな冬キビレに効果的なルアーやアプローチについて書いてみようか?と思いつつ、短い冬の間でも釣れるタイミング(時間帯)などにもある一定の傾向があって、それをハズすと実際居るのに全然喰わない…なんてことも起こる季節なので…。

まぁ、気が向いた時に気が向いたほうを その弐、その参 として追記していく予定なので、気長にお持ちくださいませ。